琉球をめぐる十九世紀国際関係史 ペリー来航・米琉コンパクト、琉球処分・分島改約交渉
琉球 歴史の空白を埋める新たなグローバル・ヒストリー
一八五四年にペリーが琉球と締結したcompactの締結までの交渉過程を明らかにし、米国からみた琉球=「Lew Chew」の姿を実証的に解明。日本・清朝・米国の三ヶ国が抱える条約交渉が琉球処分と連動し、琉球の運命を翻弄する。
<概要>
1850年代から1880年代に、日本・清朝・アメリカの三ヶ国が外交の場で琉球をどのように捉え、実際にどのように扱ったのか。「琉米修好条約」は、米国の史料ではTreatyではなく、「Compact between the United States of America and the Royal Government of Lew Chew」でCompactとなっている。ペリ—はなぜcompactとして本国に報告書を提出し、議会及び大統領もcompactとして承認したのか。「日米和親条約」とは明らかにその意義と性質が異なるものとなっている。
また、琉球処分に対する清朝の反応は清朝の史料にはどのように記録されているのか。琉球併合と分島改約交渉の全貌を日本・清朝・米国・英国の外交史料から読み解き、清朝が同時期に抱えていたイリ地域のロシア政府との外交交渉との関係性を検証して、深淵な歴史を歩んでいた琉球の世界史的な存在意義を明らかにした。
本書の第一章と第二章では、ペリーが琉球と締結したcompactについて締結までの背景を描き、一八七〇年代の日米外交における「琉球の扱い」について解明。第三章では、改約分島交渉における米国と英国の影響について分析。第四章と第五章では、改約分島交渉の妥結から遷延までの一連の流れを構築し、李鴻章の「琉球存続」政策を分析。第六章では外務卿・井上馨がイリ交渉の情勢を利用したのかを史料に基づき解明している。
<著者紹介>
山城智史
1978年 沖縄県に生まれる。
2012年 南開大学日本研究院博士課程修了
2012年-2016年 南開大学外国語学院日本語学科外教
現 在 名桜大学国際学部上級准教授 博士(歴史学)
主要論文
1.「琉球分割条約にあたえるイリ条約の影響」『沖縄文化研究』30 号 法政大学沖縄文化研究所、2004
2.「清政府对琉球分割条约的迁延政策初探」『历史档案』第2 期 中国第一历史档案馆(『歴史档案』第2 期 中国第一歴史档案館、2009)
3.「琉球帰属問題からみる李鴻章の対日政策」『琉球・沖縄研究』第3 号 早稲田大学琉球・沖縄研究所、2010
4.「日清琉球帰属問題と清露イリ境界問題-井上馨・李鴻章の対外政策を中心に-」『沖縄文化研究』37 号 法政大学沖縄文化研究所、2011
5.「明治初期日本对华外交研究-以日清琉球问题交涉为中心」(博士論文:南開大学)2012
6.「1870 年代における日清間の外交案件としての琉球帰属問題」『社会科学研究』第35 号 山梨学院大学大学院社会科学研究科、2015
7.「国際政治視野的琉球案件與井上馨外務卿的外交政略」 林泉中編『21 世紀視野下的琉球研究』、2017
8.「米琉コンパクトをめぐるペリ-提督の琉球認識」『環太平洋地域文化研究』3 号 名桜大学、2022
9.「琉球処分をめぐる李鴻章の外交基軸-琉球存続と分島改約案」『沖縄文化研究』49 号 法政大学沖縄文化研究所、2022
<目次>
序 章
1 問題の所在
2 先行研究と本書の位置付け
3 十九世紀米国資料集のなかの琉球
4 本書の構成
第一章 米琉コンパクトをめぐるペリー提督の琉球認識
1 はじめに
2 ペリーの琉球に対する認識の形成
3 ペリーの琉球占領計画とindependent nation(独立国家)という障壁
4 米国における条約の中のCompact
5 おわりに
第二章 米琉コンパクトと琉球併合
1 はじめに
2 デロングの照会、副島の回答
3 駐清米国公使からの在清琉球人に関する情報
4 ビンガムと琉球人嘆願書
5 井上毅の「琉球意見」と米琉Compact
6 おわりに
第三章 琉球問題をめぐる事前交渉と分島・改約案
1 はじめに
2 台湾事件と琉球問題の発端
3 琉球問題をめぐる日清間の不和―何如璋の抗議文
4 グラント―李鴻章、グラント―明治政府
5 李鴻章と英国駐清公使ウェードの会談
6 宍戸公使と総理衙門
7 竹添進一郎・李鴻章事前交渉―改約分島案の提起
8 李鴻章の琉球三分割案と明治政府の対応
9 おわりに
第四章 分島改約交渉と日清両政府の対応
1 はじめに
2 日清修好条規の期限内改正と琉球分割案
3 分島改約交渉―第一回~第四回
4 分島改約交渉― 第五回~第八回
5 北京交渉後の清朝政府内における動向
6 宍戸全権公使の抗議と総理衙門の対応
7 おわりに
第五章 琉球処分をめぐる李鴻章の外交基軸―琉球存続と分島改約案
1 はじめに
2 李鴻章の琉球存続案
3 琉球存続のための「自為一国」「nation」論
4 分島改約案と「譲歩」の外交
5 「琉球存続」という外交カード
6 日本の最終譲歩案と李鴻章の最終要求
7 おわりに
第六章 琉球問題とイリ交渉の連動性―井上馨の外交政策を中心に―
1 はじめに
2 分島改約交渉―琉球分割条約、イリ交渉― イリ条約
3 井上馨のイリ境界問題への対応242
4 イリ境界問題の趨勢と日本駐清・駐露外交官の洞察
5 ビュツオフ来清の可能性と李鴻章
6 おわりに
終 章
1 二つの条約 ペリーから李鴻章まで
2 歴史と歴史叙述
あとがき
資料編
琉球処分関係史料目録
原史料
一八五四年にペリーが琉球と締結したcompactの締結までの交渉過程を明らかにし、米国からみた琉球=「Lew Chew」の姿を実証的に解明。日本・清朝・米国の三ヶ国が抱える条約交渉が琉球処分と連動し、琉球の運命を翻弄する。
<概要>
1850年代から1880年代に、日本・清朝・アメリカの三ヶ国が外交の場で琉球をどのように捉え、実際にどのように扱ったのか。「琉米修好条約」は、米国の史料ではTreatyではなく、「Compact between the United States of America and the Royal Government of Lew Chew」でCompactとなっている。ペリ—はなぜcompactとして本国に報告書を提出し、議会及び大統領もcompactとして承認したのか。「日米和親条約」とは明らかにその意義と性質が異なるものとなっている。
また、琉球処分に対する清朝の反応は清朝の史料にはどのように記録されているのか。琉球併合と分島改約交渉の全貌を日本・清朝・米国・英国の外交史料から読み解き、清朝が同時期に抱えていたイリ地域のロシア政府との外交交渉との関係性を検証して、深淵な歴史を歩んでいた琉球の世界史的な存在意義を明らかにした。
本書の第一章と第二章では、ペリーが琉球と締結したcompactについて締結までの背景を描き、一八七〇年代の日米外交における「琉球の扱い」について解明。第三章では、改約分島交渉における米国と英国の影響について分析。第四章と第五章では、改約分島交渉の妥結から遷延までの一連の流れを構築し、李鴻章の「琉球存続」政策を分析。第六章では外務卿・井上馨がイリ交渉の情勢を利用したのかを史料に基づき解明している。
<著者紹介>
山城智史
1978年 沖縄県に生まれる。
2012年 南開大学日本研究院博士課程修了
2012年-2016年 南開大学外国語学院日本語学科外教
現 在 名桜大学国際学部上級准教授 博士(歴史学)
主要論文
1.「琉球分割条約にあたえるイリ条約の影響」『沖縄文化研究』30 号 法政大学沖縄文化研究所、2004
2.「清政府对琉球分割条约的迁延政策初探」『历史档案』第2 期 中国第一历史档案馆(『歴史档案』第2 期 中国第一歴史档案館、2009)
3.「琉球帰属問題からみる李鴻章の対日政策」『琉球・沖縄研究』第3 号 早稲田大学琉球・沖縄研究所、2010
4.「日清琉球帰属問題と清露イリ境界問題-井上馨・李鴻章の対外政策を中心に-」『沖縄文化研究』37 号 法政大学沖縄文化研究所、2011
5.「明治初期日本对华外交研究-以日清琉球问题交涉为中心」(博士論文:南開大学)2012
6.「1870 年代における日清間の外交案件としての琉球帰属問題」『社会科学研究』第35 号 山梨学院大学大学院社会科学研究科、2015
7.「国際政治視野的琉球案件與井上馨外務卿的外交政略」 林泉中編『21 世紀視野下的琉球研究』、2017
8.「米琉コンパクトをめぐるペリ-提督の琉球認識」『環太平洋地域文化研究』3 号 名桜大学、2022
9.「琉球処分をめぐる李鴻章の外交基軸-琉球存続と分島改約案」『沖縄文化研究』49 号 法政大学沖縄文化研究所、2022
<目次>
序 章
1 問題の所在
2 先行研究と本書の位置付け
3 十九世紀米国資料集のなかの琉球
4 本書の構成
第一章 米琉コンパクトをめぐるペリー提督の琉球認識
1 はじめに
2 ペリーの琉球に対する認識の形成
3 ペリーの琉球占領計画とindependent nation(独立国家)という障壁
4 米国における条約の中のCompact
5 おわりに
第二章 米琉コンパクトと琉球併合
1 はじめに
2 デロングの照会、副島の回答
3 駐清米国公使からの在清琉球人に関する情報
4 ビンガムと琉球人嘆願書
5 井上毅の「琉球意見」と米琉Compact
6 おわりに
第三章 琉球問題をめぐる事前交渉と分島・改約案
1 はじめに
2 台湾事件と琉球問題の発端
3 琉球問題をめぐる日清間の不和―何如璋の抗議文
4 グラント―李鴻章、グラント―明治政府
5 李鴻章と英国駐清公使ウェードの会談
6 宍戸公使と総理衙門
7 竹添進一郎・李鴻章事前交渉―改約分島案の提起
8 李鴻章の琉球三分割案と明治政府の対応
9 おわりに
第四章 分島改約交渉と日清両政府の対応
1 はじめに
2 日清修好条規の期限内改正と琉球分割案
3 分島改約交渉―第一回~第四回
4 分島改約交渉― 第五回~第八回
5 北京交渉後の清朝政府内における動向
6 宍戸全権公使の抗議と総理衙門の対応
7 おわりに
第五章 琉球処分をめぐる李鴻章の外交基軸―琉球存続と分島改約案
1 はじめに
2 李鴻章の琉球存続案
3 琉球存続のための「自為一国」「nation」論
4 分島改約案と「譲歩」の外交
5 「琉球存続」という外交カード
6 日本の最終譲歩案と李鴻章の最終要求
7 おわりに
第六章 琉球問題とイリ交渉の連動性―井上馨の外交政策を中心に―
1 はじめに
2 分島改約交渉―琉球分割条約、イリ交渉― イリ条約
3 井上馨のイリ境界問題への対応242
4 イリ境界問題の趨勢と日本駐清・駐露外交官の洞察
5 ビュツオフ来清の可能性と李鴻章
6 おわりに
終 章
1 二つの条約 ペリーから李鴻章まで
2 歴史と歴史叙述
あとがき
資料編
琉球処分関係史料目録
原史料