Basic沖縄戦 沈黙に向き合う
沖縄戦の次世代への継承をテーマにした「琉球新報」連載に大幅加筆。「戦争でしあわせは守れますか」という問いに実証的な沖縄戦研究で応える。
[著者略歴]
石原昌家 いしはら・まさいえ
1941年生、台湾市生まれ、沖縄県那覇市首里出身。1961年3月首里高校、66年3月大阪外国語大学西語科、1970年3月大阪市立大学大学院文学研究科修士課程(社会学専攻)修了。同年4月、国際大学教養部講師、72年4月沖縄国際大学文学部社会学科講師、74年助教授、82年教授、2010年から沖縄国際大学名誉教授、現在に至る。
【主たる著書/共編・監修】
沖縄戦関係の著書:『虐殺の島―皇軍と臣民の末路』(晩聲社)、『証言・沖縄戦―戦場の光景』(青木書店)、『沖縄の旅・アブチラガマと轟の壕-国内が戦場になった時』(集英社新書)、『援護法で知る沖縄戦認識―捏造された「真実」と靖国神社合祀』(凱風社)の新装増補改訂版『国家に捏造される沖縄戦体験-準軍属扱いされた0歳児・靖国神社へ合祀』(インパクト出版会)
沖縄戦関係の県市町村字誌:『沖縄県史』第10巻沖縄戦記録2、『那覇市史 沖縄の慟哭』(那覇市の戦時・戦後体験、戦時編)、『浦添市史』第5巻戦争体験記録、『具志川市史』第五巻戦争編戦時記録、『北中城村史』戦争・論述編、『北谷村史』第1巻通史編、『上勢頭字誌』中巻通史編(Ⅱ)、『証言資料集成 伊江島の戦中戦後体験記録』、『城間字誌』第二巻城間の歴史、『浦添市史』第一巻、『沖縄県史』各論編5近代
沖縄戦関係共編著:『争点・沖縄戦の記憶』(共著・社会評論社)』、『オキナワを平和学する』、『ピース・ナウ沖縄戦―無戦世界のための再定位』(共著・法律文化社)
生活史関係著書:『大密貿易の時代―占領初期沖縄の民衆生活』(『空白の沖縄社会史―戦果と密貿易の時代』に改題)、『郷友会社会―都市の中のムラ』(ひるぎ社)
生活史関係共著:『沖縄県史』民俗編、『沖縄市史』第三巻冊子版、『東アジア歴史対話―国境と世代を超えて』(東京大学出版会)、『日本における海洋民の総合研究―上巻―糸満系漁民を中心としてー』(九州大学出版会)
監修:『もうひとつの沖縄戦―マラリア地獄の波照間島』・『大学生の沖縄戦記録』(ひるぎ社)、『戦後コザにおける民衆生活と音楽文化』(榕樹書林)(いずれも石原ゼミナール著)、その他、共・編著論文多数。
『Basic沖縄戦 沈黙に向き合う』
も く じ
まえがき……5
第1回 問題意識の芽生え 「反戦復帰」の闘い知る/沖縄の戦争責任論に刺激 ……8
第2回 赤松氏来島事件 「真相」追う旅の始まり/「集団自決」責任で紛糾 ……10
第3回 相反する認識 戦争犯罪の調査始まる/曽野氏は「命令なかった」 ……12
第4回 「来島事件」その後 親友が赤松の主治医/複数の不思議な巡り合わせ ……14
第5回 県史の調査執筆 歴史学の視点学ぶ/北部、伊江で庶民の体験聞く……16
第6回 「軍国幼児」の記憶 沖縄戦体験 耳にせず/台湾から5歳で引き揚げ ……18
第7回 初の聞き取り調査 生の言葉に身震い/絶体絶命、板挟みの住民 ……20
第8回 戦跡基地巡り開始 聞き取り、成果生かす/バス借り“にわかガイド”……22
第9回 伊是名島虐殺事件(1) 新聞寄稿に激しい脅迫/地域のタブーに踏み込む ……24
第10回 伊是名島虐殺事件(2) 「指導者に裏切り者」/脅迫機に、真相に迫る……26
第11回 伊是名島虐殺事件(3) 島の人自身が本出版/タブー破り出身者も歓迎……28
第12回 伊是名島虐殺事件(4) 青年30数人が戦死/元「巡査」恨まれ ぬれぎぬ ……30
第13回 伊是名島虐殺事件(5) 島にタブー、真相阻む/証言公表の判断で葛藤も……32
第14回 伊是名島虐殺事件(6) 中野学校出、戦後も諜報?/聞き取り直前に沖縄去る……34
第15回 糸数アブチラガマ(1) 壕から住民銃殺/戦後の集落覆う疑惑……36
第16回 糸数アブチラガマ(2) 親族でもスパイ視/選挙で「人殺し」の汚名……38
第17回 糸数アブチラガマの調査(1) 「命どぅ宝」にじむ教訓/学生と未知の暗闇へ……40
第18回 糸数アブチラガマの調査(2) 時期ごとに役割変化/「軍民一体化」の経緯確認……42
第19回 日比野傷病兵の手記 悪臭の中、死におびえ/爆風で飛ばされ生還……44
第20回 県立平和祈念資料館 正面に日の丸と銃器/にじむ皇軍賛美に批判……46
第21回 ウワイスーコー 語り始めた体験者/「沖縄戦考える会」発足……48
第22回 平和の礎へ 被災実態調査が始動/戸籍にない戦没者も多数……50
第23回 平和祈念資料館 「証言の本」メインに/兵器の展示、住民視点で……52
第24回 沖縄戦を考える会 非難覚悟で真実解明/平和教育本も出版 歪曲や捏造、現状正す……54
第25回 那覇市民の体験記録 感情風化 重い口開く/深い心の傷に触れる……56
第26回 沖縄と軍諜報機関員 「中野学校出身」明かす/ベトナムでの活動証言……58
第27回 中野の精神 「正規軍全滅後が出番」/占領下の秘密戦も想定……60
第28回 S・Kさんの諜報活動 単独で各地を転々/現地で協力者作る……62
第29回 沖縄の遊撃隊 北部に少年護郷隊/「不還攻撃」計画を中止……64
第30回 離島残置謀者たち 身分隠し島々に潜入/米上陸備え、少年を訓練……66
第31回 波照間の元離島残置諜者 よみがえった悪夢/本人来島に島人抗議……68
第32回 波照間のマラリア被害 「苦しみ忘れるなかれ」/児童らの無念石に刻む……70
第33回 中野学校出身者の戦後 生存1400人 多様な活動/朝鮮戦争前 半島派遣も……72
第34回 戦災実態調査 惨状、数量的に把握/聞き取り、学生たちが奮起……74
第35回 浦添市史の編集 地域史づくりに新風/戦災調査、各地に広がる……76
第36回 有事法制制定の動き 「ソ連脅威論」声高に/沖縄戦の惨状伝え対抗……78
第37回 82年教科書検定事件 「沖縄戦 真実伝えて」/「虐殺」削除に県民抗議……80
第38回 83年検定事件 国、住民殺害に注文/「集団自決」加筆命じる……82
第39回 第三次教科書訴訟 「沖縄戦部分」空前絶後の報道態勢/全国へ実相伝える好機に……84
第40回 検定訴訟出張法廷 家永裁判で研究深化/住民虐殺に「直接」「間接」両面……86
第41回 「集団自決」の定義 住民は強制集団死/軍の自決と明確に区別……88
第42回 曽野氏起用の理由 虐殺証言を中略/国証人、引用を取捨選択……90
第43回 初の「裁判所判断」 国側の意見に沿う/「間接殺害」の実相認めず……92
第44回 分かりにくさの原因 援護法に「集団自決」適用/「軍民一体」意識も残存……94
第45回 表記の区別 集団死、3通りに区別/軍、「共死」を県民に強制……96
第46回 二審への準備 一審判決 否定が課題/研究仲間の著作 国側論拠に……98
第47回 二審での証人尋問 検定根拠の不当性主張/2時間超、国の論法に反論……100
第48回 一審後の新聞報道 県内紙、軍命証言を報道/県外紙「隊長命なし」強調……102
第49回 第二審証言の根幹 「軍命」発したも同然/軍と共に「死ぬこと」前提……104
第50回 第二審判決 「不正当な判断」示す/事実証言も違憲性認めず……106
第51回 最高裁判決 上告も合憲判断を維持/「集団自決」記述を容認……108
第52回 サイパンの戦争体験(上) 想像絶する収容所/見捨てられた孤児、赤ん坊……110
第53回 サイパンの戦争体験(下) 県人捕虜、米軍作業に/郷土への爆撃加担に苦悩……112
第54回 海南島(上) 日本軍が中国人虐殺/2県人目撃、「血の海に」 ……114
第55回 海南島(下) 中国人を次々と斬首/「良民証」不所持をスパイ視……116
第56回 読者からの手紙(上) 中国人斬首を目撃/父が戦時下の海南島に……118
第57回 読者からの手紙(下) 父、「先祖の地」侵攻に苦悩/中国渡来の久米村に出自……120
第58回 沖縄人の加害側面 皇軍兵で侵略に関与/アジア太平洋 広く派兵……122
第59回 平和の礎(1) 戦争拒絶の思想具現化/軍民、敵味方区別なく刻銘……126
第60回 平和の礎(2) 虐殺示す「遺骨展示」/平和の願い「礎」と通底……128
第61回 平和の礎(3) 共生の価値観提示/「恩讐を越え」に強い反発も……130
第62回 平和の礎(4) 刻銘へ全戸調査訴え/ゼミ実績示し県を説得……132
第63回 平和の礎(5) 外国人刻銘へ交渉/名簿抽出に時間要す……134
第64回 平和の礎(6) 名簿確認 壮大な作業/誤記防止へ全員新聞掲載……136
第65回 平和の礎(7) 親展で知事決断迫る/全戦没者掲載へ予算確保……138
第66回 平和の礎(8) 首相前に侵略、戦争批判/朝鮮半島南北代表 「村山談話」に影響か……140
第67回 平和の礎(9) 慰霊・追悼、記録の場に/戦争悲惨さ伝え、平和希求……142
第68回 平和祈念資料館問題(1) 壕内の日本兵 銃持たず/監修委「不自然」と指摘……144
第69回 平和祈念資料館問題(2) 「自決」強要の兵士除去/「沖縄戦の実相」根幹改ざん……146
第70回 平和祈念資料館問題(3) 部局主導の変更強調/県、上層部の指示示さず……148
第71回 平和祈念資料館問題(4) メイン展示は住民証言/県の動きに「事実隠蔽」批判 ……150
第72回 平和祈念資料館問題(5) 県幹部ら18項目改ざん/沖縄戦の残虐性薄める……152
第73回 平和祈念資料館問題(6) 改ざんは証言の抹殺/沖縄戦体験者「事実継承」訴え……154
第74回 平和祈念資料館問題(7) 戦争マラリアも改ざん/実相伝える記述、大幅削除……156
第75回 平和祈念資料館問題(8) 「強制退去」県が削除/戦争マラリア、国責任薄める……158
第76回 平和祈念資料館問題(9) 軍の残虐性薄める/県、監修委に無断で大幅変更……160
第77回 平和祈念資料館問題(10) 変更案資料を非公開/県議会も問題解明へ動き……162
第78回 平和祈念資料館問題(11) 展示変更、県三役関与/隠蔽姿勢、与党も批判……164
第79回 平和祈念資料館問題(12) 展示変更案の全体判明/次々に「日本の加害」削除……166
第80回 平和祈念資料館問題(13) 国策批判抑え、展示変更/歴史認識、根底から覆す……168
第81回 平和祈念資料館問題(14) 銃不所持の日本兵 発注/業者、指示受け対処に苦慮……170
第82回 平和祈念資料館問題(15) 県、変更前展示に戻す/改ざん再発の懸念も……172
第83回 平和祈念資料館問題(16) 知事会見も募る不信感/展示変更の責任、明確にせず……174
第84回 平和祈念資料館問題(17) 加害展示 政権から批判/内容「偏向」と決めつけ……176
第85回 平和祈念資料館問題(18) 旧日本軍の加害、攻撃/全国の資料館、「反日」批判 ……178
第86回 平和祈念資料館問題(19) 日本軍の強制を明記/「集団自決」の表現改める……180
第87回 平和祈念資料館問題(20) 住民被害の元凶示す史料/天皇、早期終戦を拒絶……182
第88回 平和祈念資料館問題(21) 住民盾に天皇制守る/被害増大の根源迫る史料……184
第89回 平和祈念資料館問題(22) 「米ビラ私有は銃殺」/日本軍、相次ぐ住民虐殺……186
第90回 平和祈念資料館問題(23) 背景知り戦争体験継承を/大局的資料が不可欠……188
第91回 平和祈念資料館問題(24) 兵器誇る展示「理念壊す」/戦場の悲惨さ 伝えられず……190
第92回 平和祈念資料館問題(25) 99年、軍事化の分岐点/戦争できる国へかじ切る……192
第93回 歴史修正主義の台頭(1) 沖縄戦改ざん顕著に/教科書で「軍民一体」記述も……194
第94回 歴史修正主義の台頭(2) 大江・岩波裁判に発展/「軍命なかった」全国展開へ……196
第95回 歴史修正主義の台頭(3) 「敗訴はありえない」/提訴された大江氏に手紙……198
第96回 歴史修正主義の台頭(4) 被害住民 軍人と同列/政府答弁書 援護法適用者は「軍関与」 ……200
第97回 歴史修正主義の台頭(5) 教科書通してねつ造/「軍命」有無の自然解消狙う……202
第98回 歴史修正主義の台頭(6) 再び戦場化の危機/現状変える大きな力を……204
第99回 歴史修正主義の台頭(7) 「沖縄民族皆殺し」の恐怖/32軍壕跡は証拠の「現場」 ……206
第100回 無戦世界(1) 憲法の平和主義を財産に/命こそ宝示す「市の鍵」……208
第101回 無戦世界(2) 「命どぅ宝」の行き先/世界を一つの連邦国家に……210
第102回 無戦世界(3) 平和思想の到達点/比屋根氏が掘り起こす……212
第103回 無戦世界(4) 53年に世界連邦結成/継承できず痛恨の極み……214
第104回 無戦世界(5) 超党派議連に一条の光/戦争根絶に個々人の思い……216
第105回 歴史修正主義を正す(1) 「援護法社会」の沖縄/赤子も「集団自決」(殉国死)……218
第106回 歴史修正主義を正す(2) 遺族は「援護法」反対/国家の責任追及潰える……220
第107回 歴史修正主義を正す(3) タブー破り捏造暴く/「非国民」も戦闘参加者に……222
第108回 歴史修正主義を正す(4) 知事「訓練提案」に驚き/県政基本は「ぬちどぅ宝」……224
第109回 歴史修正主義を正す(5) 無防備都市へ条例を/沖縄戦は県民に武装指示……228
第110回 歴史修正主義を正す(6) 住民守るための知恵/沖縄で無防備地域宣言を……230
第111回 歴史修正主義を正す(7) 命守るため学習を/名簿提出の先に戦場動員……232
第112回 歴史修正主義を正す(8) シェルター報道に恐怖/沖縄戦改ざんの動きも……234
第113回 歴史修正主義を正す(9) 先人の遺志継承こそ/琉球、軍配備拒否を懇願……236
第114回 歴史修正主義を正す(10) 「集団自決」意識的に使用/政府、戦争責任の免責狙う……238
第115回 歴史修正主義を正す(11) 靖国合祀取消求め提訴/沖縄戦の史実歪曲を批判……240
第116回 歴史修正主義を正す(12) 沖縄戦再来目前に/軍事勢力に抗う意志を……242
第117回 無軍備国家 世界連邦は希望の光/東アジアに不戦共同体を……244
あとがき……246
まえがき(抜粋)
本書は、2017年9月7日から22年12月22日まで、琉球新報文化欄に連載してきた掲載紙面を書籍化したものです。
「沈黙に向き合うー沖縄戦聞き取り47年」というタイトルで、1970年から沖縄戦に向き合ってきた事柄を、月2回117回掲載することになりました。(中略)そもそも私の専門は社会学であり、その研究材料はフィールドワーカーとして、生活史の聞き取り調査を重ねて入手してきました。テーマは多岐にわたり、沖縄戦体験の聞き取りは、その一つでした。その戦争体験の聞き取り調査にまつわる経験を連載することになった時、はからずもフィールドワーカーとしての手法が反映され、思いもよらないテーマへと展開していくということにもなり、連載の回数が増えていくことになっていったのです。(中略)
なお、2022年2月、インパクト出版会から出版した『国家に捏造される沖縄戦体験―準軍属扱いされた0歳児・靖国神社へ合祀』(2016年、凱風社が発刊した『援護法で知る沖縄戦認識ー捏造された「真実」と靖国神社合祀』の増補改訂版)は、旧版の分かりにくさを克服したと私自身は自負していました。しかし、新聞連載中でも援護法(戦傷病者戦没者遺族等援護法)は分かりにくいという読者の声をうけ、さらにその分かりにくさを分析してきました。そして、連載の書籍化にあたり、本書にそれを反映させることにしました。したがって、本書でもって日本政府が沖縄戦体験をからめとっているカラクリが誰にでも理解できるものと信じています。
本書は、日本政府にマインドコントロールされていない若い世代が精読されたら、からめとられている沖縄戦体験とはどういうことか、という疑問の声に答えているものと、確信しています。ご理解いただいたそのときこそ、「援護法の呪縛」から沖縄社会が解き放たれ、沖縄戦体験の真実を見きわめた社会ということになります。さらに本書を読み込んでいただいた読者が、次世代へ伝えていくことを熱望しています。
いま、日本国家が琉球弧・南西諸島を戦争の最前線基地と位置づけ、沖縄戦再来の危機に直面させている今日、再び日本国家の犠牲にならないよう、本書が人びとの感性を研ぎ澄ませて、対処していく一助になることも強く願っています。
[著者略歴]
石原昌家 いしはら・まさいえ
1941年生、台湾市生まれ、沖縄県那覇市首里出身。1961年3月首里高校、66年3月大阪外国語大学西語科、1970年3月大阪市立大学大学院文学研究科修士課程(社会学専攻)修了。同年4月、国際大学教養部講師、72年4月沖縄国際大学文学部社会学科講師、74年助教授、82年教授、2010年から沖縄国際大学名誉教授、現在に至る。
【主たる著書/共編・監修】
沖縄戦関係の著書:『虐殺の島―皇軍と臣民の末路』(晩聲社)、『証言・沖縄戦―戦場の光景』(青木書店)、『沖縄の旅・アブチラガマと轟の壕-国内が戦場になった時』(集英社新書)、『援護法で知る沖縄戦認識―捏造された「真実」と靖国神社合祀』(凱風社)の新装増補改訂版『国家に捏造される沖縄戦体験-準軍属扱いされた0歳児・靖国神社へ合祀』(インパクト出版会)
沖縄戦関係の県市町村字誌:『沖縄県史』第10巻沖縄戦記録2、『那覇市史 沖縄の慟哭』(那覇市の戦時・戦後体験、戦時編)、『浦添市史』第5巻戦争体験記録、『具志川市史』第五巻戦争編戦時記録、『北中城村史』戦争・論述編、『北谷村史』第1巻通史編、『上勢頭字誌』中巻通史編(Ⅱ)、『証言資料集成 伊江島の戦中戦後体験記録』、『城間字誌』第二巻城間の歴史、『浦添市史』第一巻、『沖縄県史』各論編5近代
沖縄戦関係共編著:『争点・沖縄戦の記憶』(共著・社会評論社)』、『オキナワを平和学する』、『ピース・ナウ沖縄戦―無戦世界のための再定位』(共著・法律文化社)
生活史関係著書:『大密貿易の時代―占領初期沖縄の民衆生活』(『空白の沖縄社会史―戦果と密貿易の時代』に改題)、『郷友会社会―都市の中のムラ』(ひるぎ社)
生活史関係共著:『沖縄県史』民俗編、『沖縄市史』第三巻冊子版、『東アジア歴史対話―国境と世代を超えて』(東京大学出版会)、『日本における海洋民の総合研究―上巻―糸満系漁民を中心としてー』(九州大学出版会)
監修:『もうひとつの沖縄戦―マラリア地獄の波照間島』・『大学生の沖縄戦記録』(ひるぎ社)、『戦後コザにおける民衆生活と音楽文化』(榕樹書林)(いずれも石原ゼミナール著)、その他、共・編著論文多数。
『Basic沖縄戦 沈黙に向き合う』
も く じ
まえがき……5
第1回 問題意識の芽生え 「反戦復帰」の闘い知る/沖縄の戦争責任論に刺激 ……8
第2回 赤松氏来島事件 「真相」追う旅の始まり/「集団自決」責任で紛糾 ……10
第3回 相反する認識 戦争犯罪の調査始まる/曽野氏は「命令なかった」 ……12
第4回 「来島事件」その後 親友が赤松の主治医/複数の不思議な巡り合わせ ……14
第5回 県史の調査執筆 歴史学の視点学ぶ/北部、伊江で庶民の体験聞く……16
第6回 「軍国幼児」の記憶 沖縄戦体験 耳にせず/台湾から5歳で引き揚げ ……18
第7回 初の聞き取り調査 生の言葉に身震い/絶体絶命、板挟みの住民 ……20
第8回 戦跡基地巡り開始 聞き取り、成果生かす/バス借り“にわかガイド”……22
第9回 伊是名島虐殺事件(1) 新聞寄稿に激しい脅迫/地域のタブーに踏み込む ……24
第10回 伊是名島虐殺事件(2) 「指導者に裏切り者」/脅迫機に、真相に迫る……26
第11回 伊是名島虐殺事件(3) 島の人自身が本出版/タブー破り出身者も歓迎……28
第12回 伊是名島虐殺事件(4) 青年30数人が戦死/元「巡査」恨まれ ぬれぎぬ ……30
第13回 伊是名島虐殺事件(5) 島にタブー、真相阻む/証言公表の判断で葛藤も……32
第14回 伊是名島虐殺事件(6) 中野学校出、戦後も諜報?/聞き取り直前に沖縄去る……34
第15回 糸数アブチラガマ(1) 壕から住民銃殺/戦後の集落覆う疑惑……36
第16回 糸数アブチラガマ(2) 親族でもスパイ視/選挙で「人殺し」の汚名……38
第17回 糸数アブチラガマの調査(1) 「命どぅ宝」にじむ教訓/学生と未知の暗闇へ……40
第18回 糸数アブチラガマの調査(2) 時期ごとに役割変化/「軍民一体化」の経緯確認……42
第19回 日比野傷病兵の手記 悪臭の中、死におびえ/爆風で飛ばされ生還……44
第20回 県立平和祈念資料館 正面に日の丸と銃器/にじむ皇軍賛美に批判……46
第21回 ウワイスーコー 語り始めた体験者/「沖縄戦考える会」発足……48
第22回 平和の礎へ 被災実態調査が始動/戸籍にない戦没者も多数……50
第23回 平和祈念資料館 「証言の本」メインに/兵器の展示、住民視点で……52
第24回 沖縄戦を考える会 非難覚悟で真実解明/平和教育本も出版 歪曲や捏造、現状正す……54
第25回 那覇市民の体験記録 感情風化 重い口開く/深い心の傷に触れる……56
第26回 沖縄と軍諜報機関員 「中野学校出身」明かす/ベトナムでの活動証言……58
第27回 中野の精神 「正規軍全滅後が出番」/占領下の秘密戦も想定……60
第28回 S・Kさんの諜報活動 単独で各地を転々/現地で協力者作る……62
第29回 沖縄の遊撃隊 北部に少年護郷隊/「不還攻撃」計画を中止……64
第30回 離島残置謀者たち 身分隠し島々に潜入/米上陸備え、少年を訓練……66
第31回 波照間の元離島残置諜者 よみがえった悪夢/本人来島に島人抗議……68
第32回 波照間のマラリア被害 「苦しみ忘れるなかれ」/児童らの無念石に刻む……70
第33回 中野学校出身者の戦後 生存1400人 多様な活動/朝鮮戦争前 半島派遣も……72
第34回 戦災実態調査 惨状、数量的に把握/聞き取り、学生たちが奮起……74
第35回 浦添市史の編集 地域史づくりに新風/戦災調査、各地に広がる……76
第36回 有事法制制定の動き 「ソ連脅威論」声高に/沖縄戦の惨状伝え対抗……78
第37回 82年教科書検定事件 「沖縄戦 真実伝えて」/「虐殺」削除に県民抗議……80
第38回 83年検定事件 国、住民殺害に注文/「集団自決」加筆命じる……82
第39回 第三次教科書訴訟 「沖縄戦部分」空前絶後の報道態勢/全国へ実相伝える好機に……84
第40回 検定訴訟出張法廷 家永裁判で研究深化/住民虐殺に「直接」「間接」両面……86
第41回 「集団自決」の定義 住民は強制集団死/軍の自決と明確に区別……88
第42回 曽野氏起用の理由 虐殺証言を中略/国証人、引用を取捨選択……90
第43回 初の「裁判所判断」 国側の意見に沿う/「間接殺害」の実相認めず……92
第44回 分かりにくさの原因 援護法に「集団自決」適用/「軍民一体」意識も残存……94
第45回 表記の区別 集団死、3通りに区別/軍、「共死」を県民に強制……96
第46回 二審への準備 一審判決 否定が課題/研究仲間の著作 国側論拠に……98
第47回 二審での証人尋問 検定根拠の不当性主張/2時間超、国の論法に反論……100
第48回 一審後の新聞報道 県内紙、軍命証言を報道/県外紙「隊長命なし」強調……102
第49回 第二審証言の根幹 「軍命」発したも同然/軍と共に「死ぬこと」前提……104
第50回 第二審判決 「不正当な判断」示す/事実証言も違憲性認めず……106
第51回 最高裁判決 上告も合憲判断を維持/「集団自決」記述を容認……108
第52回 サイパンの戦争体験(上) 想像絶する収容所/見捨てられた孤児、赤ん坊……110
第53回 サイパンの戦争体験(下) 県人捕虜、米軍作業に/郷土への爆撃加担に苦悩……112
第54回 海南島(上) 日本軍が中国人虐殺/2県人目撃、「血の海に」 ……114
第55回 海南島(下) 中国人を次々と斬首/「良民証」不所持をスパイ視……116
第56回 読者からの手紙(上) 中国人斬首を目撃/父が戦時下の海南島に……118
第57回 読者からの手紙(下) 父、「先祖の地」侵攻に苦悩/中国渡来の久米村に出自……120
第58回 沖縄人の加害側面 皇軍兵で侵略に関与/アジア太平洋 広く派兵……122
第59回 平和の礎(1) 戦争拒絶の思想具現化/軍民、敵味方区別なく刻銘……126
第60回 平和の礎(2) 虐殺示す「遺骨展示」/平和の願い「礎」と通底……128
第61回 平和の礎(3) 共生の価値観提示/「恩讐を越え」に強い反発も……130
第62回 平和の礎(4) 刻銘へ全戸調査訴え/ゼミ実績示し県を説得……132
第63回 平和の礎(5) 外国人刻銘へ交渉/名簿抽出に時間要す……134
第64回 平和の礎(6) 名簿確認 壮大な作業/誤記防止へ全員新聞掲載……136
第65回 平和の礎(7) 親展で知事決断迫る/全戦没者掲載へ予算確保……138
第66回 平和の礎(8) 首相前に侵略、戦争批判/朝鮮半島南北代表 「村山談話」に影響か……140
第67回 平和の礎(9) 慰霊・追悼、記録の場に/戦争悲惨さ伝え、平和希求……142
第68回 平和祈念資料館問題(1) 壕内の日本兵 銃持たず/監修委「不自然」と指摘……144
第69回 平和祈念資料館問題(2) 「自決」強要の兵士除去/「沖縄戦の実相」根幹改ざん……146
第70回 平和祈念資料館問題(3) 部局主導の変更強調/県、上層部の指示示さず……148
第71回 平和祈念資料館問題(4) メイン展示は住民証言/県の動きに「事実隠蔽」批判 ……150
第72回 平和祈念資料館問題(5) 県幹部ら18項目改ざん/沖縄戦の残虐性薄める……152
第73回 平和祈念資料館問題(6) 改ざんは証言の抹殺/沖縄戦体験者「事実継承」訴え……154
第74回 平和祈念資料館問題(7) 戦争マラリアも改ざん/実相伝える記述、大幅削除……156
第75回 平和祈念資料館問題(8) 「強制退去」県が削除/戦争マラリア、国責任薄める……158
第76回 平和祈念資料館問題(9) 軍の残虐性薄める/県、監修委に無断で大幅変更……160
第77回 平和祈念資料館問題(10) 変更案資料を非公開/県議会も問題解明へ動き……162
第78回 平和祈念資料館問題(11) 展示変更、県三役関与/隠蔽姿勢、与党も批判……164
第79回 平和祈念資料館問題(12) 展示変更案の全体判明/次々に「日本の加害」削除……166
第80回 平和祈念資料館問題(13) 国策批判抑え、展示変更/歴史認識、根底から覆す……168
第81回 平和祈念資料館問題(14) 銃不所持の日本兵 発注/業者、指示受け対処に苦慮……170
第82回 平和祈念資料館問題(15) 県、変更前展示に戻す/改ざん再発の懸念も……172
第83回 平和祈念資料館問題(16) 知事会見も募る不信感/展示変更の責任、明確にせず……174
第84回 平和祈念資料館問題(17) 加害展示 政権から批判/内容「偏向」と決めつけ……176
第85回 平和祈念資料館問題(18) 旧日本軍の加害、攻撃/全国の資料館、「反日」批判 ……178
第86回 平和祈念資料館問題(19) 日本軍の強制を明記/「集団自決」の表現改める……180
第87回 平和祈念資料館問題(20) 住民被害の元凶示す史料/天皇、早期終戦を拒絶……182
第88回 平和祈念資料館問題(21) 住民盾に天皇制守る/被害増大の根源迫る史料……184
第89回 平和祈念資料館問題(22) 「米ビラ私有は銃殺」/日本軍、相次ぐ住民虐殺……186
第90回 平和祈念資料館問題(23) 背景知り戦争体験継承を/大局的資料が不可欠……188
第91回 平和祈念資料館問題(24) 兵器誇る展示「理念壊す」/戦場の悲惨さ 伝えられず……190
第92回 平和祈念資料館問題(25) 99年、軍事化の分岐点/戦争できる国へかじ切る……192
第93回 歴史修正主義の台頭(1) 沖縄戦改ざん顕著に/教科書で「軍民一体」記述も……194
第94回 歴史修正主義の台頭(2) 大江・岩波裁判に発展/「軍命なかった」全国展開へ……196
第95回 歴史修正主義の台頭(3) 「敗訴はありえない」/提訴された大江氏に手紙……198
第96回 歴史修正主義の台頭(4) 被害住民 軍人と同列/政府答弁書 援護法適用者は「軍関与」 ……200
第97回 歴史修正主義の台頭(5) 教科書通してねつ造/「軍命」有無の自然解消狙う……202
第98回 歴史修正主義の台頭(6) 再び戦場化の危機/現状変える大きな力を……204
第99回 歴史修正主義の台頭(7) 「沖縄民族皆殺し」の恐怖/32軍壕跡は証拠の「現場」 ……206
第100回 無戦世界(1) 憲法の平和主義を財産に/命こそ宝示す「市の鍵」……208
第101回 無戦世界(2) 「命どぅ宝」の行き先/世界を一つの連邦国家に……210
第102回 無戦世界(3) 平和思想の到達点/比屋根氏が掘り起こす……212
第103回 無戦世界(4) 53年に世界連邦結成/継承できず痛恨の極み……214
第104回 無戦世界(5) 超党派議連に一条の光/戦争根絶に個々人の思い……216
第105回 歴史修正主義を正す(1) 「援護法社会」の沖縄/赤子も「集団自決」(殉国死)……218
第106回 歴史修正主義を正す(2) 遺族は「援護法」反対/国家の責任追及潰える……220
第107回 歴史修正主義を正す(3) タブー破り捏造暴く/「非国民」も戦闘参加者に……222
第108回 歴史修正主義を正す(4) 知事「訓練提案」に驚き/県政基本は「ぬちどぅ宝」……224
第109回 歴史修正主義を正す(5) 無防備都市へ条例を/沖縄戦は県民に武装指示……228
第110回 歴史修正主義を正す(6) 住民守るための知恵/沖縄で無防備地域宣言を……230
第111回 歴史修正主義を正す(7) 命守るため学習を/名簿提出の先に戦場動員……232
第112回 歴史修正主義を正す(8) シェルター報道に恐怖/沖縄戦改ざんの動きも……234
第113回 歴史修正主義を正す(9) 先人の遺志継承こそ/琉球、軍配備拒否を懇願……236
第114回 歴史修正主義を正す(10) 「集団自決」意識的に使用/政府、戦争責任の免責狙う……238
第115回 歴史修正主義を正す(11) 靖国合祀取消求め提訴/沖縄戦の史実歪曲を批判……240
第116回 歴史修正主義を正す(12) 沖縄戦再来目前に/軍事勢力に抗う意志を……242
第117回 無軍備国家 世界連邦は希望の光/東アジアに不戦共同体を……244
あとがき……246
まえがき(抜粋)
本書は、2017年9月7日から22年12月22日まで、琉球新報文化欄に連載してきた掲載紙面を書籍化したものです。
「沈黙に向き合うー沖縄戦聞き取り47年」というタイトルで、1970年から沖縄戦に向き合ってきた事柄を、月2回117回掲載することになりました。(中略)そもそも私の専門は社会学であり、その研究材料はフィールドワーカーとして、生活史の聞き取り調査を重ねて入手してきました。テーマは多岐にわたり、沖縄戦体験の聞き取りは、その一つでした。その戦争体験の聞き取り調査にまつわる経験を連載することになった時、はからずもフィールドワーカーとしての手法が反映され、思いもよらないテーマへと展開していくということにもなり、連載の回数が増えていくことになっていったのです。(中略)
なお、2022年2月、インパクト出版会から出版した『国家に捏造される沖縄戦体験―準軍属扱いされた0歳児・靖国神社へ合祀』(2016年、凱風社が発刊した『援護法で知る沖縄戦認識ー捏造された「真実」と靖国神社合祀』の増補改訂版)は、旧版の分かりにくさを克服したと私自身は自負していました。しかし、新聞連載中でも援護法(戦傷病者戦没者遺族等援護法)は分かりにくいという読者の声をうけ、さらにその分かりにくさを分析してきました。そして、連載の書籍化にあたり、本書にそれを反映させることにしました。したがって、本書でもって日本政府が沖縄戦体験をからめとっているカラクリが誰にでも理解できるものと信じています。
本書は、日本政府にマインドコントロールされていない若い世代が精読されたら、からめとられている沖縄戦体験とはどういうことか、という疑問の声に答えているものと、確信しています。ご理解いただいたそのときこそ、「援護法の呪縛」から沖縄社会が解き放たれ、沖縄戦体験の真実を見きわめた社会ということになります。さらに本書を読み込んでいただいた読者が、次世代へ伝えていくことを熱望しています。
いま、日本国家が琉球弧・南西諸島を戦争の最前線基地と位置づけ、沖縄戦再来の危機に直面させている今日、再び日本国家の犠牲にならないよう、本書が人びとの感性を研ぎ澄ませて、対処していく一助になることも強く願っています。