出来事の残響  原爆文学と沖縄文学

村上 陽子

2,400円 +税

ISBN: 978-4-7554-0255-5        2015年07月発刊

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収束なき福島原発事故、沖縄を蹂躙する軍事基地。この時代の中で原爆や沖縄戦のなかから紡ぎ出された文学作品をとおし、他者の痛みを自分の問題としていかに生きなおすかを問う。沖縄・広島・長崎、いま・ここにある死者たちとともに。

目次

序章 7
一、出来事の深奥からの響き  7
二、原爆文学と沖縄文学を論じる意義について  9
三、本書の構成  12

第一部 原爆を書く・被爆を生きる  17

第一章 原爆文学と批評――大田洋子をめぐって  18
一、大田洋子の位相 18
二、戦後の大田洋子の文学観 19
三、「記録」と「小説」の狭間で 23
四、大田洋子の政治性 28
五、大田洋子の「変貌」 31

第二章  原爆を見る眼――大田洋子「ほたる 「H市歴訪」のうち」37
一、大田洋子と原民喜37
二、死者への回路を開く「鎮魂歌」 39
三、「ほたる」における原民喜/石門/死者」 43
四、被爆者の肌へのまなざし 47
五、つめかえす被爆者 51
六、「異様」さを見出す眼 53

第三章  半人間の射程と限界――大田洋子「半人間」 57
一、「半人間」に対する評価をめぐって 57
二、「不安神経症」と「一九五二年の現在」 60
三、半人間という存在 65
四、検閲とマルキシズム 68
五、半人間の限界 73

第二部 占領下沖縄・声なき声の在処  81

第四章 他者との連帯の可能性に向けて――長堂英吉「黒人街」 82
一、「黒人街」で描かれたもの 82
二、日の丸をめぐるまなざし 85
三、「日の丸事件」の解釈 88
四、黒人街という空間 92
五、抹消される被傷性 97
六、来るべき連帯 101

第五章 沈黙へのまなざし――大城立裕「カクテル・パーティー」 104
一、「カクテル・パーティー」が提起する諸問題  104
二、被害者の言葉の収奪 108
三、法の暴力性 113
四、身体の発話行為 118

第六章 骨のざわめき――嶋津与志「骨」と沖縄の現在 124
一、米軍占領下の文学としての「骨」 124
二、沖縄の日本「復帰」前後
三、骨のざわめき、ねじれた語り
四、記憶を分かち合うことの拒否
五、「骨」と現在との接続に向けて
六、開発の遅延が示す可能性

第三部 到来する記憶・再来する出来事  145

第七章 せめぎあう語りの場――林京子「祭りの場」  146
一、原爆文学における「祭りの場」の位置づけ  146
二、「祭りの場」の評価の変遷 148
三、〈神の御子〉があらわすもの 150
四、極限状況にあり続ける〈私たち〉 154
五、不在を語る言葉 157
六、持続する破壊 160

第八章 体験を分有する試み――林京子『ギヤマン ビードロ』 164
一、『ギヤマン ビードロ』はどう読まれてきたか 164
二、体験の分有の契機 167
三、被爆という出来事の当事者性をめぐって 172
四、語りの中に生起する他者 179
五、語り―聞く回路の創出に向けて 183

第九章 原発小説を読み直す――井上光晴「西海原子力発電所」 186
一、原発を小説に書くこと 186
二、死者という空所 190
三、贋被爆者の語りと本当の当事者の語り 192
四、贋被爆者になるという体験 196
五、三・一一以降の贋被爆者 200

第四部 いま・ここにある死者たちとともに 205

第十章 亡霊は誰にたたるか――又吉栄喜「ギンネム屋敷」 206
一、「ギンネム屋敷」の亡霊たち 206
二、空所に充填される欲望 210
三、亡霊の回路  214
四、「変わらない」ことの暴力性 218
五、亡霊の隠蔽とアメリカの存在 222
六、空所を埋めるギンネム  225

第十一章  音の回帰――目取真俊「風音」 228
一、戦争の記憶を生きる試み 228
二、語られない記憶、語られる物語 233
三、音が生成する関係 237
四、語られない記憶の残響 242

第十二章 循環する水――目取真俊「水滴」 247
一、記憶が呼び起こす痛み 247
二、徳正の身体感覚 249
三、死者の身体性 253
四、水が示す二つの循環 257
五、排除される女性身体 261
六、出来事に引きこまれること 365

終章 269
一、分断の痛みと出来事への共振 269
二、軍事占領とジェンダー  270
三、当事者/非当事者の分断を越えて 274
四、呼びかけに応えることを目指して 277

文献一覧 279
初出一覧 292
あとがき 295