サハラの水 正田昭作品集

正田昭[著] 川村湊[編]

3,000円 +税

ISBN: 978-4-7554-0335-4        2023年08月25日発行

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「死刑囚表現展」の原点!  
代表作「サハラの水」と全小説、執行直前の日記「夜の記録」を収載。
長らく絶版だった代表作の復刊。

推薦=青木理
「独房と砂漠。生と死。両極を往還して紡がれる本作は、安易な先入観を覆す孤高の文学である」

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正田昭(しょうだあきら)

1929年、大阪市生まれ。
1953年バー・メッカ殺人事件を実行し、1963年最高裁で死刑確定、
1969年12月東京拘置所で死刑を執行される。
バー・メッカ殺人事件 慶応大卒の24歳の若者・正田昭が遊興費に困って金融業者を殺害、バー・メッカの天井裏に死体を隠したが、滴る血で事件が発覚。三ヶ月逃亡の末逮捕された。当時、戦後アプレゲール犯罪の一つとして注目を浴びた。獄中でキリスト教に帰依し、加賀乙彦と親交を結び、加賀の代表作の一つ『宣告』のモデルの一人となる。
著書に
『黙想ノート』(みすず書房)、
『夜の記録』(聖パウロ女子修道会)、
『獄中日記・母への最後の手紙』(女子パウロ会)がある。
「サハラの水」は群像新人文学賞に応募し最終候補に残り、
『群像』一九六三年九月号に掲載された。

「正田昭の文章は迫り来る「死」と毎日、毎時分、しっかりと向かい合いながら、さまざまに変容する自分の内面世界を隈なく書きつくすそうとするものだった。(中略)
 彼よりも先に死刑台に登った者があれば、彼は一日中、悲しみと恐怖に襲われることを隠していない。冷血漢といわれ、残虐な犯罪者といわれた死刑囚たちも、常に「死」を意識し、片時も〈最後の日〉の〈その時〉が来ることを忘れることのできないのであり、心穏やかに過ごすことのできない存在なのだ。
私たち人間は、いつも「死」と隣り合っている。私たちは「生」の内側に「死」を抱え続けている存在にほかならない。だからといって、一般人と死刑囚とが同等の存在であるということはおこがましく、根本的に誤ったことだろう。
 来るべき「死」について恐れ戦き、それを頭の中から追い出すこと、もしくは悟り切ることのできない死刑囚としての存在、聖人でもなく、凡俗の人間としての現実存在としての正田昭がいる。彼が書きたかったのは、そんな運命の下で虫けらのように生きる人間の惨めさであり、不条理性だった。そして、そこからでも一条の光を見つけ出そうとする、いじましいまでの人間の努力と希望なのである。」
〔本書所収・川村湊「解説 正田昭論」より〕

●サハラの水 目次

I 創作篇 007
サハラの水 008

雨(短篇1)  042
海(短篇2)  046
空(短篇3)  051
旅人(短篇4) 060
枯葉(短篇5) 066
凧揚げ(短篇6)074
母(短篇7)  079
踏み絵(短篇8)086

二少年(習作1)091
夜の音(習作2)097
秋夜(習作3) 103
星(習作4)  111
明日の虫(習作5)118
明日の湖(習作6)144

詩稿(参照作品)168
 鷲 夏 名もなくて 凋落 めばえ 朝顔 いずこともなく 松 立秋 風 死者と生者との


Ⅱ 日記篇 173
夜の記録 174
母への最後の手紙(参照作品) 266

解説・年譜・初出一覧 271
解説 正田昭論 川村湊 272
正田昭年譜 294
初出一覧 296
編集後記 297