広島 爆心都市からあいだの都市へ 「ジェンダー×植民地主義 交差点としてのヒロシマ」連続講座論考集
広島を平和都市、爆心都市としてシンボル化していく中心主義をほどくために――。〈ジェンダー・フェミニズム・植民地主義〉という複合視点を視座に、〈広島〉をめぐって22人が展開する挑戦的論考集。加納実紀代さんの最後の講演録も所収。
執筆者
小田原のどか・切明千枝子・森田裕美・宋恵媛・加納実紀代
池川玲子・高雄きくえ・平井和子・笹岡啓子・柿木伸之・権鉉基
安錦珠・河口和也・堀江有里・植松青児・森亜紀子・川口隆行
阿部小涼・河内美穂・道面雅量・田浪亜央江・中谷いずみ
広島 爆心都市からあいだの都市へ◉目次
はじめに 3
第1章 旧陸軍被服支廠とヒロシマの記憶 23
小田原のどか 爆心地の彫刻 広島から得た視点を敷衍する 24
批評の必要……25
彫刻の恥ずかしさ……26
語り続けること……29
おわりに:まだ見ぬ誰かへ……32
森田裕美 旧陸軍被服支廠と広島の記憶 34
はじめに……34
軍都廣島を伝える「無言の証人」……36
詩画人・四國五郎と被服支廠……37
被爆……38
敗戦後の活用……40
存廃を巡る動き……41
そして私たちは……43
切明千枝子 加害と被害が刻印された全四棟が保存されることを強く望みます 44
第2章 在日朝鮮人女性史・生活史から学ぶ 55
宋恵媛 在日朝鮮人一世女性を読む 56
文学とエゴドキュメントと、そのあいだ
はじめに──一世女性はどこにいるのか……56
在日女性研究には学問的価値がない?……58
文字資料の中で女性たちと出会う……60
一世女性たちはどのように描かれてきたか……61
「エゴドキュメント」と「文学」とその「あいだ」……64
女性たちの作品を読む……67
一世女性たちと識字教育……67
文字世界の中の一世女性たち……69
むすびにかえて……78
第3章 加納実紀代が語る、加納実紀代を語る 83
加納実紀代 『平和』表象としての鳩と折鶴 二〇一八年一一月一七日・『〈銃後史〉を歩く』出版記念会講演 84
表象研究の意義……84
平和とは何か……87
「平和」表象としての鳩……89
「平和」表象としての折鶴……90
〈無辜なる被害者〉の構築……90
世界に広がる禎子と折鶴……93
「右」に回収される「平和」表象……95
「右」に回収される折鶴……96
「大東亜戦争」肯定と千羽鶴……98
「表象」の持つ多面性……99
さいごに……101
池川玲子 未完の集大成「『平和』表象としての鳩と折鶴」考 103
極私的交差路で辿る加納史学……103
加納実紀代さんと若桑みどりさん……103
戦争とジェンダー表象研究会……105
立つ瀬がない……107
3・11……107
「立つ瀬」を築くために─折鶴と鳩……109
二〇一八年『「銃後史」をあるく』……110
未完の集大成……112
「『平和』表象としての鳩と折鶴」の挑戦……112
ドラマへの意欲……113
未完の集大成「『平和』表象としての鳩と折鶴」を考える……114
宿題……114
「かっちゃんとミチコちゃん」……116
まとめにかえて……119
高雄きくえ 広島で「加納実紀代」を継承するということ 121
はじめに……121
『女たちの〈銃後〉』序章のインパクト……122
被爆体験を女の視点で考えるシンポジウム「女がヒロシマを語る」……126
原爆資料館で「銃後を支える力となって 女性と戦争」展……127
被爆者は加害者なのか─「加害と被害の二重性」をめぐって……130
広島で「加納実紀代」を継承するとは……132
平井和子 「被害」と「加害」の底深い悲惨さの自覚 「帝国の慰安婦」と「帝国の母」と 135
はじめに─「被害」と「加害」の二重性を引き受けつづけて……135
原点にあるもの……135
加納さんとのご縁のなかで……138
〝銃後の女〟は加害者か?……140
「侵略された女」と「銃後の女」をつなぐフェミニズム……143
「帝国の慰安婦」と「帝国の母」と……145
朴裕河さんの本をめぐって……145
日本兵と「慰安婦」の恋愛関係─消去されたノイズ……148
「平和の少女像」をめぐって―「被害」と「加害」の二重構造を見据えよ……149
『帝国の母』……151
まとめにかえて……152
第4章 『パーク・シティ』公園都市広島を語る 155
笹岡啓子 「なにかが起こったあとの場所」への眼 〈暗さ〉は抵抗 156
慣れ親しんだ街への違和感……156
ここは「広島に落ちた(その)原爆が落ちたみたいだ」……160
〈広島−東京−東北〉の往還から……162
公園化されていく三陸地域……167
柿木伸之 〈公園都市〉を視る写真の批評性 171
笹岡啓子『PARK CITY』への応答として
暴力が交差する場としての広島に向き合う……171
ヒロシマのアウラを剝ぎ取る写真……173
想起の媒体としての写真……176
公園化とそれを突き抜けるもの……180
第5章 広島の在日朝鮮人史を掘り起こすために 185
権鉉基 消える朝鮮人史への危機感から資料室づくりへ 186
「君はだれか?」という問いに……186
広島在日朝鮮人史の現在……188
資料室が新しい動きにつながるように……190
安錦珠 船越町に生きる在日韓国・朝鮮人 いつ・なぜ朝鮮人集落が形成され、どのように生きてきたか 193
はじめに……193
広島の韓国・朝鮮人……195
船越町の朝鮮人集落……197
船越町はどんな所?……197
船越町民の生活……201
朝鮮人の「船越」への流入……207
船越町の在日韓国・朝鮮人の生活……214
朝鮮人集落と日本人側の朝鮮人集落に対するイメージ……215
仕事……217
抵抗……218
仕事を失って帰国……220
定住志向と仕事の変貌……222
花都部落の宅地購入……223
地域の変化……224
朝鮮学校……226
初・中・高級学校……226
電機高校と朝鮮学校の生徒同士の喧嘩、そして教員同士の交流……228
教育内容の変化と朝鮮学校の課題……231
廉和善先生と教員免許取得……231
むすび……233
第6章 セクシャル・マイノリティとフェミニズムの対話 237
河口和也 家族から疎外される/を求める性的マイノリティ 238
「反家族」から出発……238
「身近な人が同性愛だった場合」の反応……240
パートナーシップ制度という動き……242
広島の場合……244
パートナーシップ制度と同性婚……246
性自認と同性婚……247
私が同性婚を容認する理由……249
堀江有里 〈反婚〉の可能性 婚姻不平等の現実と、制度がはらむ問題を同時に考えることは不可能なのか? 251
はじめに─問題の所在……251
自己紹介……252
問題関心……253
不平等の解消と〈反婚〉の可能性……254
〈分断〉をみつめる……257
性的マイノリティとフェミニズムのあいだ?……257
同性婚」の(不)可能性……261
キリスト教の立場から─内在的な宗教批判の必要……263
それでも、なお、〈反婚〉を─分断を架橋するために……266
高雄きくえ 選択的夫婦別姓が法制化すると日本の家父長制・婚姻制度の何がひらかれるのか フェミニズム・ジェンダー/植民主義という視点から考える 270
はじめに……270
二つのこだわり……272
自著『わたしの名前』の反響……273
わたしの「選択的夫婦別姓法制化」への共感と違和感……276
おわりに─戸籍につながる婚姻/家父長制・植民地支配を問い、ひらくために……281
第7章 〈この世界の片隅に〉現象を読み解くためのレッスン 283
植松青児 三つのコンテクスト(軍都・ジェンダー・植民地主義)から読み解く 284
すずの故郷・江波の顔……285
祖父と朝鮮人強制動員……287
日本軍「慰安婦」と地つづきの白木リン……288
ノスタルジーと歴史修正主義に抗する批判を……290
森亜紀子 切り落とされてきた場所・出来事から考える 呉・沖縄・南洋群島を糸口に 294
私の視点─沖縄・南洋群島を経由して故郷・呉に向きあう……294
『この世界の片隅に』はなぜ多くの人の心を掴んだのか─描かれたことと切り落とされたこと─……297
「戦災地」としての呉を描く……297
戦時下の暮らしを詳細に再現した……298
すずの「呉市民化」の過程を丁寧に描いた……301
戦争への強い関心の一方で不可視化されてきた植民地主義─南洋群島は「楽園」だった?─……303
「楽園」と名付ける植民者……304
沖縄エリート出身者・徳村夫婦の場合……306
チャモロ女性と光子さんのあいだ……308
沖縄人エリート層の帝国意識の内面化……310
消しさられた他者とその傷跡……314
おわりに─広島で培われてきた議論をさらに開くには─……315
川口隆行 〈この世界の片隅に〉現象をどう考えるか 植松報告、森報告を受けて 317
〈この世界の片隅に〉現象の前史について……318
『この世界の片隅に』にある朝鮮人イメージから何を考えるか?─植松報告を受けて……320
こうの史代の「普遍」へのこだわりをどう考えるべきか?─森報告を受けて……324
「復興」あるいは「レジリエンス」という言葉の浸透……326
おわりに……328
第8章 広島で〈加害性〉を語るということ 329
阿部小涼 爆心都市からあいだの都市へ 植民地主義と戦争の責任という経路 330
はじめに……330
広島とあいだ……331
最近の報道から……334
沖縄の米軍基地をめぐる報道……334
被爆者をめぐる報道……338
コミュニケーションが寸断する戦争の責任という経路……339
日米首脳電話会談……339
核禁条約をめぐる平行線の同じ俎上……340
人々による別の物語の探求……343
被爆者からグローバル・ヒバクシャへ……345
軍事主義空間の忘却に抗う……346
空爆への問いと人種主義……349
米軍基地と核と女性解放……352
おわりに……357
河内美穂 植民地主義の起点・運動の継承 359
私自身のここ数年の最大の課題を提言として
私から始まる……359
「満州国」と中国残留邦人……361
「満州国」と中国朝鮮族……363
「満州国」とモンゴル系諸民族……364
加害との向き合い方……366
上野英信『天皇陛下萬歳』に見る加害との向き合い方……367
運動の継承……368
植民地主義の起点……370
アイヌについて 植民地化の原型……372
先住権を求める闘い……373
田浪亜央江 広島と中東の〈加害・被害〉と植民地主義 376
「復興」をめぐる齟齬から見えるもの
広島の「世界認識」……376
植民地経験に続く中東の現在……378
「アウシュビッツ」と広島……380
パレスチナから広島を問う……384
道面雅量 ヒロシマからは少し離れて 387
「呉」という地から……387
チョウ・ムンサンの遺書……389
姜徳景さんとの出会い……390
「不戦兵士」小島清文……391
自由の価値と多様性……392
おわりに……393
中谷いずみ 未来を語ること 井上ひさし『父と暮せば』 395
はじめに……395
『父と暮せば』の時間……396
記憶の回復/整序と再生産的未来……399
単線的時間の(不)可能性─大田洋子『夕凪の街と人と』を参照軸として……404
おわりに 411
執筆者
小田原のどか・切明千枝子・森田裕美・宋恵媛・加納実紀代
池川玲子・高雄きくえ・平井和子・笹岡啓子・柿木伸之・権鉉基
安錦珠・河口和也・堀江有里・植松青児・森亜紀子・川口隆行
阿部小涼・河内美穂・道面雅量・田浪亜央江・中谷いずみ
広島 爆心都市からあいだの都市へ◉目次
はじめに 3
第1章 旧陸軍被服支廠とヒロシマの記憶 23
小田原のどか 爆心地の彫刻 広島から得た視点を敷衍する 24
批評の必要……25
彫刻の恥ずかしさ……26
語り続けること……29
おわりに:まだ見ぬ誰かへ……32
森田裕美 旧陸軍被服支廠と広島の記憶 34
はじめに……34
軍都廣島を伝える「無言の証人」……36
詩画人・四國五郎と被服支廠……37
被爆……38
敗戦後の活用……40
存廃を巡る動き……41
そして私たちは……43
切明千枝子 加害と被害が刻印された全四棟が保存されることを強く望みます 44
第2章 在日朝鮮人女性史・生活史から学ぶ 55
宋恵媛 在日朝鮮人一世女性を読む 56
文学とエゴドキュメントと、そのあいだ
はじめに──一世女性はどこにいるのか……56
在日女性研究には学問的価値がない?……58
文字資料の中で女性たちと出会う……60
一世女性たちはどのように描かれてきたか……61
「エゴドキュメント」と「文学」とその「あいだ」……64
女性たちの作品を読む……67
一世女性たちと識字教育……67
文字世界の中の一世女性たち……69
むすびにかえて……78
第3章 加納実紀代が語る、加納実紀代を語る 83
加納実紀代 『平和』表象としての鳩と折鶴 二〇一八年一一月一七日・『〈銃後史〉を歩く』出版記念会講演 84
表象研究の意義……84
平和とは何か……87
「平和」表象としての鳩……89
「平和」表象としての折鶴……90
〈無辜なる被害者〉の構築……90
世界に広がる禎子と折鶴……93
「右」に回収される「平和」表象……95
「右」に回収される折鶴……96
「大東亜戦争」肯定と千羽鶴……98
「表象」の持つ多面性……99
さいごに……101
池川玲子 未完の集大成「『平和』表象としての鳩と折鶴」考 103
極私的交差路で辿る加納史学……103
加納実紀代さんと若桑みどりさん……103
戦争とジェンダー表象研究会……105
立つ瀬がない……107
3・11……107
「立つ瀬」を築くために─折鶴と鳩……109
二〇一八年『「銃後史」をあるく』……110
未完の集大成……112
「『平和』表象としての鳩と折鶴」の挑戦……112
ドラマへの意欲……113
未完の集大成「『平和』表象としての鳩と折鶴」を考える……114
宿題……114
「かっちゃんとミチコちゃん」……116
まとめにかえて……119
高雄きくえ 広島で「加納実紀代」を継承するということ 121
はじめに……121
『女たちの〈銃後〉』序章のインパクト……122
被爆体験を女の視点で考えるシンポジウム「女がヒロシマを語る」……126
原爆資料館で「銃後を支える力となって 女性と戦争」展……127
被爆者は加害者なのか─「加害と被害の二重性」をめぐって……130
広島で「加納実紀代」を継承するとは……132
平井和子 「被害」と「加害」の底深い悲惨さの自覚 「帝国の慰安婦」と「帝国の母」と 135
はじめに─「被害」と「加害」の二重性を引き受けつづけて……135
原点にあるもの……135
加納さんとのご縁のなかで……138
〝銃後の女〟は加害者か?……140
「侵略された女」と「銃後の女」をつなぐフェミニズム……143
「帝国の慰安婦」と「帝国の母」と……145
朴裕河さんの本をめぐって……145
日本兵と「慰安婦」の恋愛関係─消去されたノイズ……148
「平和の少女像」をめぐって―「被害」と「加害」の二重構造を見据えよ……149
『帝国の母』……151
まとめにかえて……152
第4章 『パーク・シティ』公園都市広島を語る 155
笹岡啓子 「なにかが起こったあとの場所」への眼 〈暗さ〉は抵抗 156
慣れ親しんだ街への違和感……156
ここは「広島に落ちた(その)原爆が落ちたみたいだ」……160
〈広島−東京−東北〉の往還から……162
公園化されていく三陸地域……167
柿木伸之 〈公園都市〉を視る写真の批評性 171
笹岡啓子『PARK CITY』への応答として
暴力が交差する場としての広島に向き合う……171
ヒロシマのアウラを剝ぎ取る写真……173
想起の媒体としての写真……176
公園化とそれを突き抜けるもの……180
第5章 広島の在日朝鮮人史を掘り起こすために 185
権鉉基 消える朝鮮人史への危機感から資料室づくりへ 186
「君はだれか?」という問いに……186
広島在日朝鮮人史の現在……188
資料室が新しい動きにつながるように……190
安錦珠 船越町に生きる在日韓国・朝鮮人 いつ・なぜ朝鮮人集落が形成され、どのように生きてきたか 193
はじめに……193
広島の韓国・朝鮮人……195
船越町の朝鮮人集落……197
船越町はどんな所?……197
船越町民の生活……201
朝鮮人の「船越」への流入……207
船越町の在日韓国・朝鮮人の生活……214
朝鮮人集落と日本人側の朝鮮人集落に対するイメージ……215
仕事……217
抵抗……218
仕事を失って帰国……220
定住志向と仕事の変貌……222
花都部落の宅地購入……223
地域の変化……224
朝鮮学校……226
初・中・高級学校……226
電機高校と朝鮮学校の生徒同士の喧嘩、そして教員同士の交流……228
教育内容の変化と朝鮮学校の課題……231
廉和善先生と教員免許取得……231
むすび……233
第6章 セクシャル・マイノリティとフェミニズムの対話 237
河口和也 家族から疎外される/を求める性的マイノリティ 238
「反家族」から出発……238
「身近な人が同性愛だった場合」の反応……240
パートナーシップ制度という動き……242
広島の場合……244
パートナーシップ制度と同性婚……246
性自認と同性婚……247
私が同性婚を容認する理由……249
堀江有里 〈反婚〉の可能性 婚姻不平等の現実と、制度がはらむ問題を同時に考えることは不可能なのか? 251
はじめに─問題の所在……251
自己紹介……252
問題関心……253
不平等の解消と〈反婚〉の可能性……254
〈分断〉をみつめる……257
性的マイノリティとフェミニズムのあいだ?……257
同性婚」の(不)可能性……261
キリスト教の立場から─内在的な宗教批判の必要……263
それでも、なお、〈反婚〉を─分断を架橋するために……266
高雄きくえ 選択的夫婦別姓が法制化すると日本の家父長制・婚姻制度の何がひらかれるのか フェミニズム・ジェンダー/植民主義という視点から考える 270
はじめに……270
二つのこだわり……272
自著『わたしの名前』の反響……273
わたしの「選択的夫婦別姓法制化」への共感と違和感……276
おわりに─戸籍につながる婚姻/家父長制・植民地支配を問い、ひらくために……281
第7章 〈この世界の片隅に〉現象を読み解くためのレッスン 283
植松青児 三つのコンテクスト(軍都・ジェンダー・植民地主義)から読み解く 284
すずの故郷・江波の顔……285
祖父と朝鮮人強制動員……287
日本軍「慰安婦」と地つづきの白木リン……288
ノスタルジーと歴史修正主義に抗する批判を……290
森亜紀子 切り落とされてきた場所・出来事から考える 呉・沖縄・南洋群島を糸口に 294
私の視点─沖縄・南洋群島を経由して故郷・呉に向きあう……294
『この世界の片隅に』はなぜ多くの人の心を掴んだのか─描かれたことと切り落とされたこと─……297
「戦災地」としての呉を描く……297
戦時下の暮らしを詳細に再現した……298
すずの「呉市民化」の過程を丁寧に描いた……301
戦争への強い関心の一方で不可視化されてきた植民地主義─南洋群島は「楽園」だった?─……303
「楽園」と名付ける植民者……304
沖縄エリート出身者・徳村夫婦の場合……306
チャモロ女性と光子さんのあいだ……308
沖縄人エリート層の帝国意識の内面化……310
消しさられた他者とその傷跡……314
おわりに─広島で培われてきた議論をさらに開くには─……315
川口隆行 〈この世界の片隅に〉現象をどう考えるか 植松報告、森報告を受けて 317
〈この世界の片隅に〉現象の前史について……318
『この世界の片隅に』にある朝鮮人イメージから何を考えるか?─植松報告を受けて……320
こうの史代の「普遍」へのこだわりをどう考えるべきか?─森報告を受けて……324
「復興」あるいは「レジリエンス」という言葉の浸透……326
おわりに……328
第8章 広島で〈加害性〉を語るということ 329
阿部小涼 爆心都市からあいだの都市へ 植民地主義と戦争の責任という経路 330
はじめに……330
広島とあいだ……331
最近の報道から……334
沖縄の米軍基地をめぐる報道……334
被爆者をめぐる報道……338
コミュニケーションが寸断する戦争の責任という経路……339
日米首脳電話会談……339
核禁条約をめぐる平行線の同じ俎上……340
人々による別の物語の探求……343
被爆者からグローバル・ヒバクシャへ……345
軍事主義空間の忘却に抗う……346
空爆への問いと人種主義……349
米軍基地と核と女性解放……352
おわりに……357
河内美穂 植民地主義の起点・運動の継承 359
私自身のここ数年の最大の課題を提言として
私から始まる……359
「満州国」と中国残留邦人……361
「満州国」と中国朝鮮族……363
「満州国」とモンゴル系諸民族……364
加害との向き合い方……366
上野英信『天皇陛下萬歳』に見る加害との向き合い方……367
運動の継承……368
植民地主義の起点……370
アイヌについて 植民地化の原型……372
先住権を求める闘い……373
田浪亜央江 広島と中東の〈加害・被害〉と植民地主義 376
「復興」をめぐる齟齬から見えるもの
広島の「世界認識」……376
植民地経験に続く中東の現在……378
「アウシュビッツ」と広島……380
パレスチナから広島を問う……384
道面雅量 ヒロシマからは少し離れて 387
「呉」という地から……387
チョウ・ムンサンの遺書……389
姜徳景さんとの出会い……390
「不戦兵士」小島清文……391
自由の価値と多様性……392
おわりに……393
中谷いずみ 未来を語ること 井上ひさし『父と暮せば』 395
はじめに……395
『父と暮せば』の時間……396
記憶の回復/整序と再生産的未来……399
単線的時間の(不)可能性─大田洋子『夕凪の街と人と』を参照軸として……404
おわりに 411