広島 爆心都市からあいだの都市へ  「ジェンダー×植民地主義 交差点としてのヒロシマ」連続講座論考集

高雄きくえ[編]

3,000円 +税

ISBN: 978-4-7554-0326-2        2022年11月25日発行

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広島を平和都市、爆心都市としてシンボル化していく中心主義をほどくために――。〈ジェンダー・フェミニズム・植民地主義〉という複合視点を視座に、〈広島〉をめぐって22人が展開する挑戦的論考集。加納実紀代さんの最後の講演録も所収。

執筆者
小田原のどか・切明千枝子・森田裕美・宋恵媛・加納実紀代
池川玲子・高雄きくえ・平井和子・笹岡啓子・柿木伸之・権鉉基
安錦珠・河口和也・堀江有里・植松青児・森亜紀子・川口隆行
阿部小涼・河内美穂・道面雅量・田浪亜央江・中谷いずみ


広島 爆心都市からあいだの都市へ◉目次

はじめに  3

第1章 旧陸軍被服支廠とヒロシマの記憶 23
小田原のどか  爆心地の彫刻 広島から得た視点を敷衍する  24
  批評の必要……25
  彫刻の恥ずかしさ……26
  語り続けること……29
  おわりに:まだ見ぬ誰かへ……32
森田裕美  旧陸軍被服支廠と広島の記憶  34
  はじめに……34
  軍都廣島を伝える「無言の証人」……36
  詩画人・四國五郎と被服支廠……37
  被爆……38
  敗戦後の活用……40
  存廃を巡る動き……41
  そして私たちは……43
切明千枝子  加害と被害が刻印された全四棟が保存されることを強く望みます  44

第2章 在日朝鮮人女性史・生活史から学ぶ 55
宋恵媛  在日朝鮮人一世女性を読む  56
  文学とエゴドキュメントと、そのあいだ
  はじめに──一世女性はどこにいるのか……56
  在日女性研究には学問的価値がない?……58
  文字資料の中で女性たちと出会う……60
  一世女性たちはどのように描かれてきたか……61
  「エゴドキュメント」と「文学」とその「あいだ」……64
  女性たちの作品を読む……67
  一世女性たちと識字教育……67
  文字世界の中の一世女性たち……69
  むすびにかえて……78

第3章 加納実紀代が語る、加納実紀代を語る 83
加納実紀代  『平和』表象としての鳩と折鶴 二〇一八年一一月一七日・『〈銃後史〉を歩く』出版記念会講演  84
  表象研究の意義……84
  平和とは何か……87
  「平和」表象としての鳩……89
  「平和」表象としての折鶴……90
  〈無辜なる被害者〉の構築……90
  世界に広がる禎子と折鶴……93
  「右」に回収される「平和」表象……95
  「右」に回収される折鶴……96
  「大東亜戦争」肯定と千羽鶴……98
  「表象」の持つ多面性……99
  さいごに……101
池川玲子  未完の集大成「『平和』表象としての鳩と折鶴」考  103
  極私的交差路で辿る加納史学……103
  加納実紀代さんと若桑みどりさん……103
  戦争とジェンダー表象研究会……105
  立つ瀬がない……107
  3・11……107
  「立つ瀬」を築くために─折鶴と鳩……109
  二〇一八年『「銃後史」をあるく』……110
  未完の集大成……112
  「『平和』表象としての鳩と折鶴」の挑戦……112
  ドラマへの意欲……113
  未完の集大成「『平和』表象としての鳩と折鶴」を考える……114
  宿題……114
  「かっちゃんとミチコちゃん」……116
  まとめにかえて……119
高雄きくえ  広島で「加納実紀代」を継承するということ  121
  はじめに……121
  『女たちの〈銃後〉』序章のインパクト……122
  被爆体験を女の視点で考えるシンポジウム「女がヒロシマを語る」……126
  原爆資料館で「銃後を支える力となって 女性と戦争」展……127
  被爆者は加害者なのか─「加害と被害の二重性」をめぐって……130
  広島で「加納実紀代」を継承するとは……132
平井和子  「被害」と「加害」の底深い悲惨さの自覚 「帝国の慰安婦」と「帝国の母」と  135
  はじめに─「被害」と「加害」の二重性を引き受けつづけて……135
  原点にあるもの……135
  加納さんとのご縁のなかで……138
  〝銃後の女〟は加害者か?……140
  「侵略された女」と「銃後の女」をつなぐフェミニズム……143
  「帝国の慰安婦」と「帝国の母」と……145
  朴裕河さんの本をめぐって……145
  日本兵と「慰安婦」の恋愛関係─消去されたノイズ……148
  「平和の少女像」をめぐって―「被害」と「加害」の二重構造を見据えよ……149
  『帝国の母』……151
  まとめにかえて……152


第4章 『パーク・シティ』公園都市広島を語る 155
笹岡啓子  「なにかが起こったあとの場所」への眼 〈暗さ〉は抵抗  156
  慣れ親しんだ街への違和感……156
  ここは「広島に落ちた(その)原爆が落ちたみたいだ」……160
  〈広島−東京−東北〉の往還から……162
  公園化されていく三陸地域……167
柿木伸之  〈公園都市〉を視る写真の批評性  171
  笹岡啓子『PARK CITY』への応答として
  暴力が交差する場としての広島に向き合う……171
  ヒロシマのアウラを剝ぎ取る写真……173
  想起の媒体としての写真……176
  公園化とそれを突き抜けるもの……180

第5章 広島の在日朝鮮人史を掘り起こすために 185
権鉉基  消える朝鮮人史への危機感から資料室づくりへ  186
  「君はだれか?」という問いに……186
  広島在日朝鮮人史の現在……188
  資料室が新しい動きにつながるように……190
安錦珠  船越町に生きる在日韓国・朝鮮人 いつ・なぜ朝鮮人集落が形成され、どのように生きてきたか  193
  はじめに……193
  広島の韓国・朝鮮人……195
  船越町の朝鮮人集落……197
  船越町はどんな所?……197
  船越町民の生活……201
  朝鮮人の「船越」への流入……207
  船越町の在日韓国・朝鮮人の生活……214
  朝鮮人集落と日本人側の朝鮮人集落に対するイメージ……215
  仕事……217
  抵抗……218
  仕事を失って帰国……220
  定住志向と仕事の変貌……222
  花都部落の宅地購入……223
  地域の変化……224
  朝鮮学校……226
  初・中・高級学校……226
  電機高校と朝鮮学校の生徒同士の喧嘩、そして教員同士の交流……228
  教育内容の変化と朝鮮学校の課題……231
  廉和善先生と教員免許取得……231
  むすび……233

第6章 セクシャル・マイノリティとフェミニズムの対話 237
河口和也  家族から疎外される/を求める性的マイノリティ  238
  「反家族」から出発……238
  「身近な人が同性愛だった場合」の反応……240
  パートナーシップ制度という動き……242
  広島の場合……244
  パートナーシップ制度と同性婚……246
  性自認と同性婚……247
  私が同性婚を容認する理由……249
堀江有里  〈反婚〉の可能性 婚姻不平等の現実と、制度がはらむ問題を同時に考えることは不可能なのか?  251
  はじめに─問題の所在……251
  自己紹介……252
  問題関心……253
  不平等の解消と〈反婚〉の可能性……254
  〈分断〉をみつめる……257
  性的マイノリティとフェミニズムのあいだ?……257
  同性婚」の(不)可能性……261
  キリスト教の立場から─内在的な宗教批判の必要……263
  それでも、なお、〈反婚〉を─分断を架橋するために……266
高雄きくえ  選択的夫婦別姓が法制化すると日本の家父長制・婚姻制度の何がひらかれるのか フェミニズム・ジェンダー/植民主義という視点から考える  270
  はじめに……270
  二つのこだわり……272
  自著『わたしの名前』の反響……273
  わたしの「選択的夫婦別姓法制化」への共感と違和感……276
  おわりに─戸籍につながる婚姻/家父長制・植民地支配を問い、ひらくために……281

第7章 〈この世界の片隅に〉現象を読み解くためのレッスン 283
植松青児  三つのコンテクスト(軍都・ジェンダー・植民地主義)から読み解く  284
  すずの故郷・江波の顔……285
  祖父と朝鮮人強制動員……287
  日本軍「慰安婦」と地つづきの白木リン……288
  ノスタルジーと歴史修正主義に抗する批判を……290
森亜紀子  切り落とされてきた場所・出来事から考える 呉・沖縄・南洋群島を糸口に  294
  私の視点─沖縄・南洋群島を経由して故郷・呉に向きあう……294
  『この世界の片隅に』はなぜ多くの人の心を掴んだのか─描かれたことと切り落とされたこと─……297
  「戦災地」としての呉を描く……297
  戦時下の暮らしを詳細に再現した……298
  すずの「呉市民化」の過程を丁寧に描いた……301
  戦争への強い関心の一方で不可視化されてきた植民地主義─南洋群島は「楽園」だった?─……303
  「楽園」と名付ける植民者……304
  沖縄エリート出身者・徳村夫婦の場合……306
  チャモロ女性と光子さんのあいだ……308
  沖縄人エリート層の帝国意識の内面化……310
  消しさられた他者とその傷跡……314
  おわりに─広島で培われてきた議論をさらに開くには─……315
川口隆行  〈この世界の片隅に〉現象をどう考えるか 植松報告、森報告を受けて  317
  〈この世界の片隅に〉現象の前史について……318
  『この世界の片隅に』にある朝鮮人イメージから何を考えるか?─植松報告を受けて……320
  こうの史代の「普遍」へのこだわりをどう考えるべきか?─森報告を受けて……324
  「復興」あるいは「レジリエンス」という言葉の浸透……326
  おわりに……328

第8章 広島で〈加害性〉を語るということ 329
阿部小涼  爆心都市からあいだの都市へ 植民地主義と戦争の責任という経路  330
  はじめに……330
  広島とあいだ……331
  最近の報道から……334
  沖縄の米軍基地をめぐる報道……334
  被爆者をめぐる報道……338
  コミュニケーションが寸断する戦争の責任という経路……339
  日米首脳電話会談……339
  核禁条約をめぐる平行線の同じ俎上……340
  人々による別の物語の探求……343
  被爆者からグローバル・ヒバクシャへ……345
  軍事主義空間の忘却に抗う……346
  空爆への問いと人種主義……349
  米軍基地と核と女性解放……352
  おわりに……357
河内美穂  植民地主義の起点・運動の継承  359
  私自身のここ数年の最大の課題を提言として
  私から始まる……359
  「満州国」と中国残留邦人……361
  「満州国」と中国朝鮮族……363
  「満州国」とモンゴル系諸民族……364
  加害との向き合い方……366
  上野英信『天皇陛下萬歳』に見る加害との向き合い方……367
  運動の継承……368
  植民地主義の起点……370
  アイヌについて 植民地化の原型……372
  先住権を求める闘い……373
田浪亜央江  広島と中東の〈加害・被害〉と植民地主義  376
  「復興」をめぐる齟齬から見えるもの
  広島の「世界認識」……376
  植民地経験に続く中東の現在……378
  「アウシュビッツ」と広島……380
  パレスチナから広島を問う……384
道面雅量  ヒロシマからは少し離れて  387
  「呉」という地から……387
  チョウ・ムンサンの遺書……389
  姜徳景さんとの出会い……390
  「不戦兵士」小島清文……391
  自由の価値と多様性……392
  おわりに……393
中谷いずみ  未来を語ること 井上ひさし『父と暮せば』  395
  はじめに……395
  『父と暮せば』の時間……396
  記憶の回復/整序と再生産的未来……399
  単線的時間の(不)可能性─大田洋子『夕凪の街と人と』を参照軸として……404

おわりに   411