近代日本の植民地主義とジェンタイル・シオニズム ―内村鑑三・矢内原忠雄・中田重治におけるナショナリズムと世界認識
日本人クリスチャン知識人のシオニズム運動への共鳴は、グローバルな帝国主義の中でどのような意味をもったのか。占領された側の抵抗の歴史と重ね合わせながら考察する。
板垣雄三(歴史家)
「日本の近代知性の原基と目されてきたものについて、見直しが迫られる。キリスト教が植民地主義・人種主義としてのシオニズムを産出したことが、いま人類に破滅という奈落の底を覗かせているからだ。独特の仕方でナショナリズムの桎梏に繋がれた日本のキリスト教を、他の宗教ともども、パレスチナ・世界の現実と照らし合わすのは、思想史の視座の問い直しに止まらず、世界政治の批判やヒトの未来への思索の基礎作業ともなるだろう。
江湖に本書を推薦します。」
2018年3月10日刊 A5判上製・399ページ
ISBN978-4-7554-0284-5 C0036
定価3700円+税
【目次】
序論 11
はじめに
第一節 日本人クリスチャンとナショナリズム
第二節 日本の植民地主義とシオニズム運動
第三節 植民地主義という用語について
第四節 ジェンタイル・シオニズムとキリスト教シオニズム、千年王国論という用語について
第五節 本書の構成
第一章 植民地主義・民族・キリスト教 41
はじめに 41
第一節 近代ヨーロッパ主権国家体制の形成と植民地主義
(一) 「大航海時代」とヨーロッパ・キリスト教世界の「他者」
(二) 西欧主権国家体制の成立と宗教改革およびカトリック改革
第二節 ピューリタン革命とジェンタイル・シオニズム
(一) 宗教改革と「ユダヤ人帰還論」
(二) ピューリタン革命と大西洋両岸における「ユダヤ人問題」の展開
(三) シャブタイ・ツヴィとイングランド
第三節 一八世紀の英米植民地主義と海外ミッションおよびジェンタイル・シオニズム
(一) 啓蒙期イギリスにおける「帝国的プロテスタンティズム」
(二) 北米植民地戦争と米国の「市民宗教」
(三) 「東方問題」の展開と世紀転換期における千年王国論の興隆
第四節 帝国主義時代の英国における海外ミッションとジェンタイル・シオニズム
(一) 帝国主義時代のイギリスにおける海外ミッションの展開
(二) 帝国主義時代のイギリスにおけるジェンタイル・シオニズムの展開
第五節 帝国主義時代の米国における海外ミッションとキリスト教シオニズム
(一) 一九世紀米国における海外ミッションの展開
(二) 一九世紀米国におけるジェンタイル・シオニズムの展開
(三) ブラックストーン請願と米国におけるシオニズム運動の始動
(四) 米国のシオニズム運動とジェンタイル・シオニズム
小括
第二章 内村鑑三におけるシオニズム論と植民地主義 115
はじめに
第一節 内村鑑三の米国体験と贖罪信仰
(一) 一九世紀米国のミッショナリー運動と札幌バンド
(二) 「エレミヤ書」とナショナリズム
(三) 帝国主義的ミッショナリー運動への反発
(四) 贖罪信仰への回心とナショナリズム
(五) 二つの移住植民地と文明発展史観
第二節 贖罪信仰と「日本の天職」
(一) 天皇制ナショナリズムとの衝突
(二) 不敬事件後の「贖罪の哲理」
(三) 『地理学考』と文明発展史観
第三節 世界帝国主義の進展と非戦論
(一) 日清戦争義戦論と預言書解釈の転換
(二) 相次ぐ帝国主義戦争と文明発展史観の変化
(三) 「戦争絶対的廃止論」の二面的性格
(四) 非戦論と文明発展史観
第四節 再臨信仰とナショナリズムの相克
(一) 再臨信仰の深化と朝鮮人クリスチャンへのまなざし
(二) 再臨運動とシオニズムの「発見」
(三) 再臨運動に対するシオニズムの影響
第五節 再臨運動の終わり
(一) 再臨運動と米騒動
(二) 再臨運動と三一独立運動
(三) 世界日曜学校大会と再臨運動の終り
第六節 再臨運動後の内村鑑三
小括
第三章 矢内原忠雄の再臨信仰とシオニズム 209
はじめに
第一節 内村鑑三の再臨信仰とシオニズム観からの影響
第二節 矢内原忠雄の再臨信仰とシオニズム論
第三節 矢内原の植民政策論と民族問題
第四節 矢内原忠雄と満州移民
第五節 矢内原忠雄における藤井武の影響、信仰と実践の関係
小括
第四章 エルサレム宣教会議と植民地主義 245
はじめに:主流派プロテスタント教会におけるジェンタイル・シオニズム
第一節 ミッショナリー運動からエキュメニカル運動への転換
第二節 エルサレム世界宣教会議と朝鮮問題
第三節 日本基督教連盟と「神の国運動」
第四節 エルサレム世界宣教会議とパレスチナ問題
小括
第五章 中田重治のユダヤ人観と日本ホーリネス教会の満州伝道 291
はじめに
第一節 第一次世界大戦と日本におけるユダヤ人への関心
第二節 軍国主義の伸張とホーリネス教会
(一) 「満州」における植民地伝道の開始
(二) 神社問題の発生
第三節 満州事変以降のホーリネス教会と軍部との関係
第四節 「聖書より見たる日本」
第五節 ユダヤ人問題への新たな関心と背景
第六節 ホーリネス分裂事件からホーリネス弾圧へ
小括
結論 349
初出一覧 371
参考文献 372
関連年表 390
あとがき 394
板垣雄三(歴史家)
「日本の近代知性の原基と目されてきたものについて、見直しが迫られる。キリスト教が植民地主義・人種主義としてのシオニズムを産出したことが、いま人類に破滅という奈落の底を覗かせているからだ。独特の仕方でナショナリズムの桎梏に繋がれた日本のキリスト教を、他の宗教ともども、パレスチナ・世界の現実と照らし合わすのは、思想史の視座の問い直しに止まらず、世界政治の批判やヒトの未来への思索の基礎作業ともなるだろう。
江湖に本書を推薦します。」
2018年3月10日刊 A5判上製・399ページ
ISBN978-4-7554-0284-5 C0036
定価3700円+税
【目次】
序論 11
はじめに
第一節 日本人クリスチャンとナショナリズム
第二節 日本の植民地主義とシオニズム運動
第三節 植民地主義という用語について
第四節 ジェンタイル・シオニズムとキリスト教シオニズム、千年王国論という用語について
第五節 本書の構成
第一章 植民地主義・民族・キリスト教 41
はじめに 41
第一節 近代ヨーロッパ主権国家体制の形成と植民地主義
(一) 「大航海時代」とヨーロッパ・キリスト教世界の「他者」
(二) 西欧主権国家体制の成立と宗教改革およびカトリック改革
第二節 ピューリタン革命とジェンタイル・シオニズム
(一) 宗教改革と「ユダヤ人帰還論」
(二) ピューリタン革命と大西洋両岸における「ユダヤ人問題」の展開
(三) シャブタイ・ツヴィとイングランド
第三節 一八世紀の英米植民地主義と海外ミッションおよびジェンタイル・シオニズム
(一) 啓蒙期イギリスにおける「帝国的プロテスタンティズム」
(二) 北米植民地戦争と米国の「市民宗教」
(三) 「東方問題」の展開と世紀転換期における千年王国論の興隆
第四節 帝国主義時代の英国における海外ミッションとジェンタイル・シオニズム
(一) 帝国主義時代のイギリスにおける海外ミッションの展開
(二) 帝国主義時代のイギリスにおけるジェンタイル・シオニズムの展開
第五節 帝国主義時代の米国における海外ミッションとキリスト教シオニズム
(一) 一九世紀米国における海外ミッションの展開
(二) 一九世紀米国におけるジェンタイル・シオニズムの展開
(三) ブラックストーン請願と米国におけるシオニズム運動の始動
(四) 米国のシオニズム運動とジェンタイル・シオニズム
小括
第二章 内村鑑三におけるシオニズム論と植民地主義 115
はじめに
第一節 内村鑑三の米国体験と贖罪信仰
(一) 一九世紀米国のミッショナリー運動と札幌バンド
(二) 「エレミヤ書」とナショナリズム
(三) 帝国主義的ミッショナリー運動への反発
(四) 贖罪信仰への回心とナショナリズム
(五) 二つの移住植民地と文明発展史観
第二節 贖罪信仰と「日本の天職」
(一) 天皇制ナショナリズムとの衝突
(二) 不敬事件後の「贖罪の哲理」
(三) 『地理学考』と文明発展史観
第三節 世界帝国主義の進展と非戦論
(一) 日清戦争義戦論と預言書解釈の転換
(二) 相次ぐ帝国主義戦争と文明発展史観の変化
(三) 「戦争絶対的廃止論」の二面的性格
(四) 非戦論と文明発展史観
第四節 再臨信仰とナショナリズムの相克
(一) 再臨信仰の深化と朝鮮人クリスチャンへのまなざし
(二) 再臨運動とシオニズムの「発見」
(三) 再臨運動に対するシオニズムの影響
第五節 再臨運動の終わり
(一) 再臨運動と米騒動
(二) 再臨運動と三一独立運動
(三) 世界日曜学校大会と再臨運動の終り
第六節 再臨運動後の内村鑑三
小括
第三章 矢内原忠雄の再臨信仰とシオニズム 209
はじめに
第一節 内村鑑三の再臨信仰とシオニズム観からの影響
第二節 矢内原忠雄の再臨信仰とシオニズム論
第三節 矢内原の植民政策論と民族問題
第四節 矢内原忠雄と満州移民
第五節 矢内原忠雄における藤井武の影響、信仰と実践の関係
小括
第四章 エルサレム宣教会議と植民地主義 245
はじめに:主流派プロテスタント教会におけるジェンタイル・シオニズム
第一節 ミッショナリー運動からエキュメニカル運動への転換
第二節 エルサレム世界宣教会議と朝鮮問題
第三節 日本基督教連盟と「神の国運動」
第四節 エルサレム世界宣教会議とパレスチナ問題
小括
第五章 中田重治のユダヤ人観と日本ホーリネス教会の満州伝道 291
はじめに
第一節 第一次世界大戦と日本におけるユダヤ人への関心
第二節 軍国主義の伸張とホーリネス教会
(一) 「満州」における植民地伝道の開始
(二) 神社問題の発生
第三節 満州事変以降のホーリネス教会と軍部との関係
第四節 「聖書より見たる日本」
第五節 ユダヤ人問題への新たな関心と背景
第六節 ホーリネス分裂事件からホーリネス弾圧へ
小括
結論 349
初出一覧 371
参考文献 372
関連年表 390
あとがき 394