林京子の文学 戦争と核の時代を生きる

熊芳(ションファン)

2,800円 +税

ISBN: 978-4-7554-0283-8        2018年01月発行

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「八月九日」の語り部を超えて
戦争と核の時代を生きた作家・林京子(1930-2017)の主要作品を読み解きながら、日本人の戦争・戦後責任、原爆と原発による加害と被害問題を考察した書き下ろし論稿

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目次
序章  7

第一章 上海(戦争)体験    19
第一節 戦中生活の「光」と「影」──『ミッシェルの口紅』  20
 1、「映写幕」の意味   20
 2、大人、そして少年少女の上海物語  23 
 3、少女の上海──その「光」と「影」 27
第二節 戦後上海再訪記──『上海』  40  
 1、心の故郷  40
 2、三十六年目の上海  47
 3、上海体験と被爆体験──「私」の「恥部」  57
第三節 大人としての上海追体験──『予定時間』  63
 1、主人公とリタ  63
 2、作品成立  68
 3、夢と〈すり替えの論理〉  74

第二章 「八月九日」の語り部  89
第一節 体験と記憶──『祭りの場』  90
 1、『祭りの場』以前の被爆記憶  90
 2、『祭りの場』の出現と評価  98
 3、反語と逆説の意味──「祭り」と「破壊」の間  104
第二節 「傷もの」の有り様──『ギヤマン ビードロ』  114
 1、〈女性〉被爆者特有の恐怖   114
 2、「上海時代」と「八月九日」  118
 3、被爆者だけに留まらぬ「傷」  126
第三節 「八月九日」を語る──『無きが如き』  140
 1、二つの糸──「八月九日」の語り部としての「女」と「私」  140
 2、すり換えられた核問題  144
 3、「無きが如き」の意味  151
第四節 鎮魂の「紙碑」──『やすらかに今はねむり給え』 161
 1、学徒動員時代の「不明」──命令解除の問題  161
 2、学徒動員と青春の物語  170
 3、鎮魂──「不明の時」への解散式  178

第三章 戦後を生きる被爆者  185
第一節 『三界の家』とは 186
 1、「家」の崩壊  186
 2、父の墓──あの世の家  188
 3、「無性」の少女へ  191
第二節 結婚生活の〈奥底〉──『谷間』  196
 1、八月X日の思い──なつこが思った結婚生活  196
 2、八月Y日の思い──草男から見た結婚生活  205
 3、八月X日とY日の抽象化  213
第三節 もう一つの「鎮魂」──『長い時間をかけた人間の経験』 219
 1、『祭りの場』との関連性  219
 2、被爆者の戦後体験と世界における核の動向  227
 3、科学的な証明──放射線問題化  236

第四章 核の恐怖と人間の存在   247
第一節 被爆者は〈人間〉だけなのか──『トリニティからトリニティへ』  248
 1、トリニティまで  248
 2、トリニティに向かう途上で  251
 3、「ルイ」への手紙  255
第二節 〈反原発〉へ──『収穫』 266
 1、「小説だが、ドキュメントに近い」の意味  266
 2、小説に顕在する〈事実〉  272
 3、〈事実〉を小説にする「方法」  284
第三節 〈再出発〉の可能性──『希望』  292
 1、小説の成立  292
 2、女性被爆(曝)者の結婚問題  297
 3、夫婦のあり方・生命の誕生   299
第四節 「フクシマ」後の報告──『再びルイへ』  308
 1、悲劇──被爆、上海体験、原発事故  308
 2、「喜劇」的な語りぶりへ   313
 3、「新しい出発」──脱原発の行動   322 

終章  329

文献一覧  337 
あとがき  348